現代の選挙において、メディア戦略が政治家の印象や支持率に大きな影響を与えるのは言うまでもないだろう。特に自民党は、時代の流れに合わせたメディア活用を行い、常に効果的に国民の注目を集めてきた。2024年の自民党総裁選も例外ではなく、党内での戦略的な動きが見事に功を奏していると私は見ている。
一方で、同時期に行われている立憲民主党の代表選は、メディアでほとんど話題にならず、いわば空気状態だ。
本記事では、岸田首相の出馬辞退を皮切りに、総裁選におけるメディア戦略の巧妙さを探り、候補者たちがどのように国民の関心を集めたか、そして他党が学ぶべき点について考察していく。
岸田首相の辞退と「新しい自民党」
8月14日、岸田首相が自民党総裁選への出馬を辞退した際、記者から新しい総裁候補について質問され、彼は「総裁選で自民党が変わる姿を示すことが重要」と強調した。この発言によって、メディアや国民の関心は一気に高まり、「次の総裁は誰なのか?」とネット上では予測合戦が繰り広げられることになる。
40代の若手候補の出馬
最初に出馬を表明したのは、小林鷹之氏と小泉進次郎氏だ。どちらもハンサムな40代で、これに対して「自民党が若返った」とネット上では賞賛の声が続出した。
ここで重要なのは、この一貫した流れだ。岸田首相が「自民党が変わる姿」を強調し、その直後に40代の若手が続けて出馬するという展開は、非常に巧妙かつ戦略的な動きに見える。この結果、総裁選への注目が一気に高まり、「新しい自民党」への期待感が膨らんだ。
40代の候補が連続して出馬したのは、党本部の戦略的な調整によるものだろう。
もしここで石破氏のような年配の定番候補が最初に出馬していたら、「結局自民党は変わらない」という失望感が広がったはずだ。まさに党の若返りという「物語作り」が成功した例といえる。
ポスタービジュアルと炎上マーケティング
さらに、総裁選のポスタービジュアルも戦略的な要素が見られる。過去の総裁や総裁候補たちが一堂に会する姿は、まるで格闘イベントのようなインパクトを与えた。このポスターが発表されるや否や、「おじさんの詰め合わせ」としてフェミニストを中心にネットで炎上が引き起った。ホリエモンや西村博之といったインフルエンサーも意見を発表し、その結果、総裁選の話題性とインプレッションがさらに拡大した。
この炎上は偶然ではなく、党本部が意図(あるいは想定)していたものだと推測できる。批判が集まるにせよ、話題にならない(無関心)よりははるかに効果的だからだ。肯定と批判が五分五分に分かれるような話題ほど、世間の関心を引き、広く議論を呼ぶ傾向にあります。
これが結果的に総裁選、ひいては自民党自体への関心を引きつける効果があるのだ。
小林鷹之のメディア戦略
最初に出馬表明をした小林鷹之氏は、40代の若手として爽やかなルックスでも注目を集めた。出馬表明会見の背景パネルは、デザイナーが関わっていることが明らかで、オレンジ色を基調とし、親しみやすさとスタイリッシュな印象を巧みに演出した。これにより、「何かやってくれそうだ」と期待感を抱かせる効果が生まれた。
さらに、「コバホーク」という自ら名乗った愛称を全面に押し出した戦略も見事だった。ニックネームを自称する政治家は珍しいが、この愛称は彼の認知度を一気に高めた。”kobahawk“は彼のXのアカウントIDにも採用されている。
また、コバホーク氏はXの広告枠を購入し、X上で積極的にターゲティング広告を打った。Xの有料広告が党内で禁止されて以降は、YouTubeでの生配信を積極的に行うなど、デジタルメディアを駆使したプロモーションを展開している。自民党議員としては珍しいこの手法が、彼の知名度向上を成功させた要因と言える。
今回の首相選出は難しいかもしれないが、このような先進的なプロモーション戦略を見る限り、次回の総裁選では有力候補として名前が挙がることが予想される。
河野太郎の双方向コミュニケーション
総裁選に出馬を表明した河野太郎氏も、かねてよりXを積極的に活用している。河野氏のフォロワー数は総裁である岸田首相の約3倍にあたる250万人を超え、その影響力は絶大だ。
そして、河野氏のツイートの特徴は、従来の一方的な政策発信ではなく、国民に疑問を投げかける形を取っている点だ。
「厚労省を分割しませんか?」「働き方改革を目指しませんか?」といった形で1日に約1回、問いかけを行い、それに対して多数のリプライが集まる。これにより、国民との対話が生まれ、政治参加の感覚を与える設計だ。現在のXのアルゴリズムはリプライによる交流を重視しており、インプレッションを増やす施策としては極めて有効だ。また、一度に複数の政策を発表するのではなく、1日1ポストに絞って政策を小出しにする戦略も効果的で、ネットニュースに取り上げられやすく、常に話題性を保つことに成功している。
他党が学ぶべき点
自民党本部や河野太郎氏のメディア戦略には、他の政党が学ぶべき多くの要素が含まれている。特に、双方向のコミュニケーションやデジタルメディアの効果的な活用は、現代の選挙戦において重要なポイントだ。
しかし、野党に不足しているのは、このような広告戦略に十分な資金を投じる姿勢である。政治には資金が不可欠であり、アメリカの大統領選挙のように、大規模な資金投入がPRの成功に直結している。
野党の政治家は「クリーンな政治」を掲げ、できるだけお金をかけない手法を取る傾向にあるが、それでは十分なPRができず、広い層にアピールする機会を失う。支持の拡大を目指すならば、適切な投資とメディア活用が欠かせないはずだ。
広報に金を投入しろ!
自民党のメディア戦略は、巧妙なプロモーションと物語作りで国民の関心を集め、期待を生み出した。若手候補の起用やビジュアルのインパクト、炎上を利用した戦略は、他党にとっても学ぶべき点だ。これらの戦略が今後の選挙活動にどう影響するかが注目される。
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